2015-10-02

作品 / Works・カルタジローネ / Caltagirone, Sicilia


 



<作品・カルタジローネCaltagirone>










カルタジローネ。 シチリア中東部の山間にある旧いバロックの街。

ローマ以前からの歴史を持ち、様々な文化の混在する町です。 陶器の里としても世界中に名を馳せているこの町は、
「ヴァル・ディ・ノートのバロック様式の町々」の一つとして世界遺産に登録されています。 旧市街のサンタ・マリア・
デル・モンテ大階段の景観はこの町を決定づけています。

142段の階段は、色とりどりの美しいマジョリカ焼のタイルで装飾されています。 タイルのデザインは10~20世紀の
広範囲にわたるとの事。


私がこの町を知ったのは遠い昔。
「夏の行方」という辻邦生のエッセイ(写真集)の中にシチリアへの文章とその階段の写真をみつけ、その景観に
圧倒されました。 何故かわからず、とても魅かれたのでした。 そして、いつかシチリアというところへ行ってみたいと。

シチリア行は数年後に実現出来ましたが、その時はカルタジローネまで到達する事は出来ませんでした。
短い旅程、しかもシチリアと言う場所で、バスを乗り継いで行く山間の町までの道のりは、その時の私には無限に
遠かったのです。 シチリアという土地がとても特別に思え、当時は女性の二人旅には相当の覚悟が必要だったという
のもありました。

カルタジローネの階段を上る事が出来たのは、2度目のシチリア旅行の時。 それから15年以上経ってからの事です。
その旅は、私のシチリアへの想いを決定づけたものとなりました。


20数年という長い年月の憧れの地。 階段の下に立ち、その想いを噛みしめて上を見上げながら、一段一段を踏みしめて
上りました。

一段毎に違うその模様を観察しながら上っていくのはとても楽しく、時間を忘れます。 独特の青、黄色、そして緑。
町中が陶器や絵タイルで彩られた旧く美しいバロックの町。


(この作品は、初めてこの階段を描いてみたもの。 2014年春の作品です。 私の中の憧れと想いを、夢のように淡く
表現してみました。 次に描く時は、全く違う表情で描いてみたいと思っています。)