2023-06-29

旅(Viaggio)・シチリア(Sicilia)/「受胎告知の聖母」@シチリア州立美術館(パレルモ)




<この絵を観る為に、シチリアへ行きたい>









“Annunciata di Palermo” (Antonello da Messina, 1476) 
@ Galleria Regionale della Sicilia
「受胎告知の聖母」(1476年、アントネッロ・ダ・メッシーナ作)
@シチリア州立美術館(パレルモ)





「受胎告知の聖母」。大好きな絵です。

私にとってこの絵は、パレルモそのもの、パレルモの代名詞。
この街を訪れると必ず観たくなる絵です。


大天使ガブリエルは描かれておらず、聖母マリアのみが正面から描かれています。
聖母マリアの神秘的な表情は、言葉では言い表せないくらい印象的。

そして500年以上前の絵にも拘らず、時を超えた臨場感・緊張感は、まるでその場に
いるかのようにリアリティがあります。
とても不思議な作品。



「受胎告知」Annunciata は、ずっと追いかけているテーマのひとつ。
イタリアでは必ず目にする題材。

数年前にシチリアへ行く時。
私のバイブルでもある「シチリアへ行きたい」(小森谷慶子・賢二著、トンボの本)の中の
「この絵を観る為にシチリアへ行きたい」というコラムでこの絵の画像を観て、
シチリア州立美術館へ走りました。

思ったよりもずっと小さな絵でしたが、その時の衝撃と感動は鮮明に覚えています。

この本は、「美しい夏の行方」(辻邦夫)と共に、私をシチリアへ誘うバイブルでもあります。
著者の小森谷慶子さんによれば「大天使の存在を光だけで表現している」との事。
その言葉も衝撃的でした。



今回の旅はパレルモでは時間も体力も無く、初めての美術館・博物館に行くのが精一杯。

「この絵を観に行ったら、全ての予定が狂ってしまうかも?」と思い、もう一度見に行くのは
諦めるつもりでしたが。
偶然、州立美術館の前を何度も通ってしまい、とうとう誘惑に負けて入館。
そしてやっぱり去り難く。再々訪を誓って絵の前を離れました。

結局は予定は狂ってしまったけれど(笑)。
その時の私に必要なものだったのだと思っています。



「その絵を観る為にその場所へ行きたい」。

そう思える作品は私にとって、きっと何枚もあるのでしょう。そんな感覚に感謝しつつ、
旅を続けて行きたいと思います。





(以下、解説書やWEBで調べた内容。)

1476年頃にシチリアで描かれたこの作品は、聖母マリアが大天使ガブリエルによって
読書を中断されたところを表しているとの事。
大天使ガブリエルは描かれておらず、聖母マリアのみが正面から描かれていて、
その視線の先にガブリエルがいるという設定。

板に油彩。油彩技法はアントネロによってイタリアに導入されたとの事。西洋美術史に
残る傑作です。































シチリア州立美術館の『アラゴンのエレオノーラの彫像』
(フランチェスコ・ラウラーナ作、1471年頃)。
こちらも印象的な作品。
"Il Ritratto di Eleonora d'Aragona" Francesco Laurana












フラ・アンジェリコの「受胎告知」1440-1445年頃
@フィレンツェ,サンマルコ美術館。
(画像はWIKIPEDIAより引用)


これも好きな作品。通常の「受胎告知」はこの構図。






2023-06-16

旅(Viaggio)・ 南イタリア VI ・プーリア /モノポリ(Southern-Italy VI / Monopoli, Puglia)




<モノポリ Monopoli>













プーリアの旅。レッチェを発ち、モノポリへ。

アドリア海沿いに面した、城壁に囲まれた旧い港町。歴史は紀元前100年くらいに遡ります。


石畳の細い路地、両脇に連なる古い建物。旧市街散策はタイムスリップしたかのよう。路地沿いにある
アーチをくぐると突然視界が開け、広々とした旧港Antico Portoへと繋がります。

旧市街、城壁沿いからその先に続くビーチ、そして大聖堂。ゆっくりと一日過ごすのに心地良い町です。

州都のバーリから南に40km、鉄道も通っていて比較的アクセスし易い町です。











































































































































































































2023-06-02

徒然なるままに、マティス展を観て感じた事。 “Henri MATISSE The Path to Color”

 




<“Henri MATISSE The Path to Color”  マティス展へ>















マティスは私にとって特別な存在です。

絵を描き始める前に、フランスの美術が気になり、展覧会を観るようになりました。

最初はモネや印象派。そしていつの間にか南仏・地中海の世界へ。
窓から外を見る作品が気になり、「コリウール」という地名に憧れました。


なぜ、フランスなのだろう?
画家はなぜ、フランスを目指すのだろう?

最近つくづく考えるのは、そんな事です。

私にとっては、イタリアはインプット、フランスはインプット&アウトプットなのかな。

イタリアでは何も考えず何もしないで、ひたすら美しいものを享受して自分の中に蓄え、

フランスに行くと、夢の中に居ながらにして、自分の半分が(またはもう一人の自分が)、
自分を冷静に観ている気がします。
この国で描きたい、発表したい、その為にはどうすれば?などという事も、
チラチラと考えます。

フランスにいる私はある意味、現実を生きている気がするのでした。


「アート大国」フランスは、とにかく刺激的。
そういう側面が好きな人は皆、フランス中毒になってしまうのかも。私も含めて。

そんな場所に少しでも携わりたいと、日仏学院のアート講義もずーっと取っています。
フランスに行って、ギャラリーでアーティスト自身から説明を聞きたい、
そして出来れば自分の作品を説明したい。という一心かも。


フランスの旅は大変な事が多過ぎるし、
いつも頭に来て「もう来ない!」と叫びながら日本に戻るのだけれど。
結局は、またすぐに行くのですよね。。。

マティス展で「コリウール」の絵を見ながら、そんな事を考える時間でした。

秋以降の目的地が決まった気もします。そうやってしばらくは浮遊していようかと。